※2024年4月5日最終更新
ヨコハマの街・再開発ブログをご覧いただきありがとうございます。
今回は、横浜市瀬谷区の旧上瀬谷通信施設跡地の再開発事業について見ていきたいと思います!
旧上瀬谷通信施設は1951年から長らく米軍に接収されていた土地ですが、2015年6月に約242haが返還され、今後の土地利用に大きな注目が集まっています。
旧上瀬谷通信施設の再開発事業について、横浜市の公開情報をもとに情報ソースを明らかにしながら概要を整理していきます。
ぜひ続きもご覧ください!
旧上瀬谷通信施設とは?
旧上瀬谷通信施設は、横浜市の瀬谷区と旭区にまたがって立地しています。
横浜市の中でもかなり西側に位置しており、大和市や町田市とも隣接しています。
鉄道の最寄駅は相鉄線 瀬谷駅ですが、直線距離でも2km以上離れており、徒歩だと20分以上かかるような距離感となっています。
ただ、鉄道アクセスは良くないものの、車の利便性はとても高いエリアです。
旧上瀬谷通信施設の周辺には、東名高速道路の横浜町田ICや保土ケ谷バイパスの上川井ICなどがあります。
約242haある旧上瀬谷通信施設のうち、45.2%が国有地、9.4%が市有地、そして45.4%が民有地となっています。
民有地ではもっぱら農業が行われていますが、これまで米軍から農業基盤の整備が制限されていたため、農道や排水施設などが十分に整備されていないようです。
現地の航空写真を見ると、旧上瀬谷通信施設がどの範囲にあるのか一目瞭然ではないかと思います。
旧上瀬谷通信施設の北側は物流施設、東側はゴルフ場(程ヶ谷カントリー倶楽部)、西側と南側は住宅地となっています。
再開発事業の概要とは?
旧上瀬谷通信施設の再開発事業は、2020年3月に横浜市が策定した「旧上瀬谷通信施設土地利用基本計画」に基づいて進められています。
この基本計画では、まちづくりのテーマや方針、土地利用の全体像、今後のスケジュールなどが示されています。
また、2023年2月には、上記の基本計画をより具体化した「旧上瀬⾕通信施設⼟地利⽤基本計画デザインノート」が公表されました。
さて、旧上瀬谷通信施設の再開発事業の全体像は、下記地図のようになっています!
約242haもの対象エリアを「農業振興地区」「観光・賑わい地区」「物流地区」「公園・防災地区」の4つに分けて開発する計画です。
また、関連事業として周辺道路の整備やインターチェンジの設置、新たな交通システムの検討などが一体となって行われます。
ここからは、旧上瀬谷通信施設がどのように開発されていくのか、「KAMISEYA PARK(観光・賑わい地区)」、「花博(公園・防災地区)」、「周辺道路整備」、「自動運転バス」、「農業振興地区」、「物流地区」の6つに焦点を絞り、それぞれ整理していきたいと思います。
KAMISEYA PARK(観光・賑わい地区)
2023年9月14日、横浜市は「観光・賑わい地区」の事業予定者と事業コンセプトを公表しました。
事業予定者は三菱地所株式会社、事業コンセプトは「KAMISEYA PARK(仮称)~世界に誇るジャパンコンテンツとジャパンテクノロジーを活用したワールドクラスの次世代型テーマパーク~」です。
また、2024年3月には各種メディアから「相鉄ホールディングス、東急、東急不動産、三菱倉庫の4社がテーマパーク開発に参画し、三菱地所と計5社で企業連合を設立する」との報道がなされました。
相鉄線や東急線など鉄道会社が参画することで、地元と一体となった開発を進める狙いがあるとみられます。
KAMISEYA PARKの敷地面積は約706,500㎡となっており、これは東京ドーム約15個分の広さです。
駐車場4,500台分、駐輪場450台分を完備するとのことで、テーマパークの規模感が伺えますね。
ちなみに開業時は年間約1,200万人の来場を見込み、段階的に1,500 万人超を目指すとのことです。
今後のスケジュールとしては、2028年に着工、2031年頃に開業予定となっています。
KAMISEYA PARKは、「テーマパークゾーン」「駅前ゾーン」「公園隣接ゾーン」「環4西ゾーン」の4エリアに分けて開発される計画です。
ここからは、各エリアの概要を簡潔に整理したいと思います。
テーマパークゾーン
テーマパークゾーンは敷地面積約510,000㎡で、KAMISEYA PARKのメインエリアになります。
こちらのエリアでは入場料が必要になります。
「最先端のエンターテイメントが集まるエリア」、「子供から大人まで楽しめるエリア」、「スリルあふれるエリア」など複数のエリアにゾーニングされ、ジャパンコンテンツと最先端のジャパンテクノロジーを活用した次世代型テーマパークとなる計画です。
駅前ゾーン
駅前ゾーンはテーマパークのグッズショップやコンビニ、ドラックストア、カフェ、レストランなどが入居する商業施設が設けられる計画です。
こちらは入場無料で、誰でも行き来できるようになるとのことです。
公園隣接ゾーン
公園隣接ゾーンでは、「農と食」や「Well-being」など、自然・人・社会が調和する新しいライフスタイルを提案する、自然をコンセプトとした商業施設が設けられる計画です。
こちらも入場無料となります。
環4西ゾーン
環4西ゾーンは、空港や主要ターミナル駅等からのバス路線を受け止めるバスターミナル等を整備し、広域からのアクセスを強化する計画です。
花博(公園・防災地区)
公園・防災地区では、2027年3月~9月に「花博」(2027年国際園芸博覧会)が開催される計画です。
参加者数はオンライン含めて1,500万人、有料来場者数は1,000万人以上と見込んでいます。
なお、花博の開催終了後は同じ場所で(仮称)旧上瀬谷通信施設公園の整備が進められる予定です。
2028年度から二次整備が行われ、2043年度ごろに全面供用が開始されるスケジュール感となっています。
旧上瀬谷通信施設公園は対象エリアを「西地区」「中央地区」「北地区」「東地区」に分け、それぞれの地区に異なる特徴を持たせる計画を打ち出しています。
西地区では、現在も機能しているスポーツ活動の場を維持する計画です。
中央地区は横浜市旭区上白根町の里山ガーデンを彷彿とさせますが、北地区ではアウトドア体験施設、東地区では体験農園などが計画されており、ただの自然公園ではないアクティビティ機能を充実させた施設になるようです。
現在計画されている旧上瀬谷通信施設公園の具体像をご覧になりたい方は、下記表をチェックしてみて下さい!
周辺道路整備
KAMISEYA PARKや花博ではかなり多くの人がアクセスすることが予想され、周辺道路の渋滞が懸念されています。
その対応策として八王子街道の拡幅、上川井IC出口の拡幅、環状4号線(海軍道路)の拡幅、道路の新設などの計画が打ち出されています。
また、2024年2月13日に開催された横浜市の建築・都市整備・道路委員会では、新たなインターチェンジの整備に関する言及がありました。
旧上瀬谷通信施設と東名高速道路を直結するICの整備を検討し、2030年代前半の供用開始を目指すとのことです。
概算整備費は2024年時点で360億円程度を想定しています。
完成予定マップを見ると、料金所は旧上瀬谷通信施設のエリア内に設置されるようです。
今後のスケジュールとして、2024年度からIC整備に向けた設計および都市計画等の手続きを進めるとともに、費用負担を含めた事業計画等の検討や関係者との協議・調整を進める予定です。
自動運転バス(新たな交通システム)
2024年2月13日に開催された横浜市の建築・都市整備・道路委員会において、瀬谷駅と旧上瀬谷通信施設を結ぶ新たな交通システムで「次世代技術(自動運転・隊列走行)を活用したバス」の導入計画が公表されました。
瀬谷・上瀬谷間において、道路混雑の影響を受けないバス専用の道路を整備し、連節バスが最大3台で隊列走行することで、運転手の省人化を図るとともに、多くの来街者を円滑に輸送するシステムを目指すとのことです。
瀬谷駅周辺には「瀬谷ターミナル」を、旧上瀬谷通信施設エリアには「上瀬谷ターミナル」を整備し、また専用道としてシールドトンネルの整備も行う計画です。
概算事業費は2024年時点で約466億円となっています。
今後のスケジュールとしては、2024年度から瀬谷・上瀬谷間のインフラ整備に向けた基本設計に着手し、都市計画等の法定手続きや、運行事業を含む事業計画の検討が進められる予定です。
2030年代前半の供用開始が目標となっています。
農業振興地区
農業振興地区は、下記地図の黄緑色に塗られたエリアです。
旧上瀬谷通信施設の西側が中心となっており、東側にも一部農業振興地区が存在しています。
農業振興地区は現時点でも農業が行われているエリアですが、長年⽶軍に接収されていたため、道路舗装が行われていないなど農業⽣産基盤が整備されていない状況です。
今回の再開発事業では、農業生産基盤の整備を進めることはもちろん、「持続可能な都市農業モデル」の確立や新規就農者の育成・支援などに注力していく方針のようです。
まだ具体的な計画は明らかになっておらず、大まかな方針のみが打ち出されているのが現状となっています。
物流地区
物流地区は、下記地図のオレンジ色に塗られたエリアです。
旧上瀬谷通信施設の北側に位置しており、東名高速道路の横浜町田ICや保土ケ谷バイパスの上川井ICに近接しています。
物流地区の北側は既に物流施設が集積しており、交通利便性の高さから物流拠点としてのポテンシャルが期待されています。
ただ、旧上瀬谷通信施設は物流施設だけでなく、公園やテーマパーク、農地などが複合的に開発される計画です。
今回の再開発事業では、まとまりのある緑量の確保や長大感や圧迫感を軽減させる建物デザインなど、周辺エリアとの融合と言う観点で開発が進められる方針となっています。
「グリーン・インフラ」や「脱炭素」などのキーワードは出てきているものの、物流地区における具体的な計画はまだ明らかになっていません。
おわりに:10年、20年の長期スパンで完成へ
今回は、旧上瀬谷通信施設の再開発事業について概要を整理しました。
これまでマスコミが伝えていた情報からは、この計画は反対派が多く事業者も集まらない先行き不透明な事業、という印象を抱いていました。
しかし、横浜市が公表している情報をもとに全体像を把握していくと「そこまで批判される計画ではないし、綿密に練られていて実現性もそこそこ高い再開発事業だな~」という感想を持ちました。
農地や物流施設と言った私たちの生活とは距離のある事業も含まれていますが、大規模な公園やテーマパークの設置に向けた計画も動き始めており、期待が高まるばかりです。
公園の完成は2040年代、テーマパークは2031年頃とまだまだ先ではありますが、街が大きく変化するこの再開発事業がとても楽しみです。
旧上瀬谷通信施設跡地の再開発事業に関する追加情報や、この記事を読んだ感想など、コメント欄にお寄せいただけると嬉しいです!
最後までお読みいただきありがとうございました!
引用:
旧上瀬谷通信施設地区トップページ(横浜市)
(仮称)旧上瀬谷通信施設公園トップページ(横浜市)
『旧上瀬谷通信施設土地利用基本計画』(2020年3月、横浜市)
『旧上瀬谷通信施設土地利用基本計画デザインノート』(2023年2月、横浜市)
『(仮称)旧上瀬谷通信施設公園基本計画(案)』(2022年6月、横浜市)
コメント
コメント一覧 (5件)
こんにちは、いつも楽しく拝見させて頂いており、ありがとうございます。
本日、羽沢横浜国大駅からすぐの高台をジョギングていて、気になる場所を見つけましたので情報提供させて頂きます。写真が添付できないので分かりづらいと思いますが、「HAZAWA BASE」オープン11時〜21時(会員オンリー)
移動式平屋のシルバー車両2台(AIRSTREM)、バーベキュースペース?、アメリカンなダチョウ?の野立て看板もありました。羽沢跨線人道橋を横浜国大とは反対方向に進んで橋を渡りきったあと、新横浜駅行きのバス停とは反対側に2分くらい進み、少しきつめのカーブした坂道を登りきります。短い陸橋を渡りすぐ、戸建て住宅と畑に挟まれた砂利の駐車場にあります。何かまた情報があればまた共有させて頂きます:) TANUPI
TANUPIさん、コメントありがとうございます。
HAZAWA BASE、おそらくこちらですよね?!
https://goo.gl/maps/cMko8NwokcUeeiP16
以前どなたかがコメントされてからずっと気になっていたのですが、会員制の施設だったとは初めて知りました!
一説では所ジョージさんの世田谷ベースの2拠点目ではないかという話もありましたが、実際どうなのでしょう。。。
また新たな情報がわかりましたらコメント欄にお寄せいただけると嬉しいです!
おはようございます。
ご連絡ありがとうございます。
ちょっと場所が違うようです。もう二区画くらい北にあります。また、スーパーハウスではなく、もっとオシャレなかんじです。
こちらになります。
〒221-0866 神奈川県横浜市神奈川区羽沢南4丁目22−6付近
35.4817320, 139.5828800
TANUPI:)
ヨコハママニアさん、教えて頂いた敷地、進入する側の前面道路が異なるだけで、よく見ると同一敷地かもしれません。また、情報を得ましたら、共有させて頂きます。宜しくお願いします。TANUPI:)
瀬谷のテーマパークはクレヨンしんちゃん。