ヨコハマの街・再開発ブログをご覧いただきありがとうございます。
今回は緑園都市駅周辺における再開発の可能性について、公開情報をもとに現状を整理していきたいと思います。
横浜市泉区に位置する緑園都市駅周辺は1970年代から宅地開発が始まり、相鉄いずみ野線沿線では最大の開発規模を誇る住宅地となっています。
緑園都市駅周辺の現状と将来性に興味のある方は、ぜひ続きもご覧ください!
緑園都市駅周辺の宅地開発の歴史
緑園都市駅は横浜市泉区緑園3丁目にある相鉄いずみ野線の駅です。
駅周辺は計画的な開発により整備されたオープンスペースや豊かな緑が存在する閑静な住宅街となっており、街に施された様々な工夫から住みやすい街として人気が高いようです。
緑園都市エリアはもともと53世帯しかない山村でしたが、1967年頃から開発の機運が高まり、1974年に土地区画整理事業が開始して大規模に開発された街です。
開発が行われた背景には相鉄いずみ野線の開通があるようです。(1965年頃から相鉄いずみ野線の工事が行われ、緑園都市駅は1976年4月8日に開業しています)。
開発総面積は約122万㎡で、東京ドーム26個分という広大なエリアが開発対象となりました。
総工費は約400億円、13年の年月を経て1987年頃に開発が完了したようです。
緑園都市エリアの街づくりは「人間性を追及した豊かな街づくり」をテーマに進められ、住みやすさが向上する工夫が随所にみられます。
住宅街の道路には、自動車によって誘発される交通事故を防ぐクルドサックやループターンが導入されています。
また、緑園都市駅と都市公園を結ぶ約1kmの歩行者専用道路「四季の径」は、緑豊かな空間として地域住民に広く利用されているようです。
さらに7つの公園や中学校用地1つ・小学校用地2つなど公益用地の整備、幹線道路・補助幹線道路における電線類の地中化、歩行者専用道路への絵タイルの設置や四季をテーマにした植栽などインフラ面の整備も充実しているのが緑園都市エリアの特徴でもあります。
相鉄いずみ野線沿線の再開発事業
相鉄いずみ野線は1976年に二俣川駅~いずみ野駅間、1990年にいずみ野駅~いずみ中央駅間、1999年にいずみ中央駅~湘南台駅がそれぞれ開業しました。
相鉄いずみ野線は駅の開業と同時に駅前空間を開発したケースが多く、開発から数十年が経ち商業施設等の老朽化が課題となっていたようです。
そこで、相鉄グループでは2010年に策定した成長戦略ロードマップ“Vision100”で「いずみ野線沿線駅前街区リノベーション計画」を打ち出し、全3弾のリノベーションを実施しました。
第一弾はいずみ野駅。2014年6月、相鉄ライフいずみ野がリニューアルオープンしました。
1977年8月に開業したショッピングセンター「いずみ野フォンテ」を建て替えたものです。
第二弾は南万騎が原駅。2916年4月、相鉄ライフ南まきが原がリニューアルオープンしました。
1980年に開業した南万騎が原駅前のショッピングセンター「まきが原ショッピングプラザ 相鉄ライフ」を建て替えたものです。
第三弾は弥生台駅。2017年10月、相鉄ライフやよい台がリニューアルオープンしました。
1983年に開業した「やよい台ショッピングプラザ」を駅前の再開発に合わせて整備したものです。
上記リノベーション計画のほかには、ここ数年でゆめが丘駅周辺の開発事業が大規模に行われ、土地区画整理事業とともに駅前に大規模商業施設「ゆめが丘ソラトス」が2024年7月25日に開業しました。
相鉄いずみ野線のうち、ターミナル駅である二俣川駅と湘南台駅を除くと、6駅中4駅が再開発を行っていることがわかります。
残る2駅は緑園都市駅といずみ中央駅です。
緑園都市駅前の商業施設「相鉄ライフ緑園都市」は1989年5月に開業しており、またいずみ中央駅前の商業施設「相鉄ライフいずみ中央」は1993年4月に開業しています。
いずみ野線沿線駅前街区リノベーション計画でリニューアルしたいずみ野は1977年開業、南万騎が原は1980年開業、弥生台は1983年ですから、開業順にリノベーションが行われていることが分かります。
つまり、今後リノベーションの対象となるのは緑園都市、いずみ中央の順というのが明白と言って過言ではないでしょう。
緑園都市駅周辺の将来性とは?
ここからは横浜市と相鉄グループの公開情報をもとに、緑園都市駅周辺の将来性を見ていきたいと思います。
➀横浜市:横浜市都市計画マスタープラン泉区プラン
まず、横浜市では「横浜市都市計画マスタープラン泉区プラン」を策定しています。
おおむね20年後を見据えた泉区の基本的な都市計画の方針を示すものとなっています。
2005年に策定された後、2016年11月に改定が行われており、この2016年版が最新です。
泉区プランでは、緑園都市について「緑園都市駅、弥生台駅、いずみ野駅、踊場駅、中田駅の周辺では、区民が日常的に利用する買物・サービス機能の集積を図ります。」との言及がありました。
また駅周辺の土地利用に関しては、「緑園都市駅周辺は、計画的な開発により整備されたオープンスペースや豊かな緑が存在しています。民間企業や大学との協働により、これらの地域資源などを活用した、まちの魅力づくり、地域コミュニティの発展を図ります。」との記載がありました。
泉区プランで言及されている内容は以上になります。
緑園都市駅周辺の再開発等に関する具体的な記載は見られませんでした。
②相鉄グループ:Vision2030
相鉄グループは2021年11月25日、2030年を目標年度とする「長期ビジョン”Vision2030”」を公表しました。
Vision2030は相鉄グループの目指す姿、グループ経営方針、重点戦略を策定しており、相鉄グループの指針となるようなものとみられます。
重点戦略は全部で6つあり、その中でも「3.選ばれる沿線の創造」は緑園都市駅周辺の再開発と関連がありそうだと思いましたが、あくまで中長期的な視点で全体像を描く抽象度の高いものであるため、具体的な言及はありませんでした。
より具体的な計画として、Vision2030と同時に公表された「2022~2024年度中期経営計画」があります。
2022~2024年度の3か年で実現させようとしている具体的な取り組みを記載しているものになります。
重点戦略についても具体的な記載があり、「3.選ばれる沿線の創造」については計2スライドで記載されていました。
これを見ると、既存重点エリアとして「沿線開発6大プロジェクト」があり、また、新たな重点(再開発・活性化)エリアとして西谷・羽沢横浜国大・鶴ヶ峰があると言及されています。
この中に緑園都市駅周辺に関する記述はなく、少なくとも2022~2024年度の3か年では緑園都市駅周辺に大きな動きはないことが明らかとなりました。
今後期待できることとしては、2024年11月から12月頃には2025~2027年度の中期経営計画が公表される見通しです。
この中計で緑園都市駅周辺の再開発に関する言及がなされるか、注目していきたいところです。
現地レポート(2024年9月)
ここからは、緑園都市駅周辺の現在の様子を写真とともに見ていきたいと思います。
街の開発から数十年経過した緑園都市駅の周辺はどのような様子なのか、ぜひ続きもご覧ください!
➀緑園都市駅
緑園都市駅の東口を撮影しました。
1976年に開業した緑園都市駅ですが、2015年にリニューアル工事が行われています。
当時のリニューアル工事は内装工事が中心だったのか、外観からは少し劣化した様子がみられました。
こちらは西口の様子です。
東口に相鉄ライフ緑園都市やバスロータリーがある一方、西口は駅前空間が広くないので、こじんまりした印象です。
西口広場は木々がたくさん植えられていて、緑豊かな落ち着いた雰囲気となっていました。
②相鉄ライフ緑園都市
相鉄ライフ緑園都市は形状が特殊で、東口エリアの通路的な役割も果たしています。
1989年開業ということで、開業から約35年が経過していることもあり、全体的に古さを感じさせる外観でした。
テナントはそうてつローゼンを筆頭に、ハックドラッグや100円ショップなどが入居しています。
この看板も開業当初からあるのでしょうか、歴史を感じさせますね。
こちらの看板は色が落ちてしまっているのか、テナントの入退去を繰り返すうちに更新しなくなってしまったのかはわかりません。
③東口広場
駅前空間をこれだけ広々と開放的に設けられているのは、ゼロから開発した街というのが大きいですよね。
相鉄本線と相鉄いずみ野線で一番違うと感じるのは駅前空間の開放感ではないでしょうか。
古さは感じられるものの、植栽が手入れされていて広場にゴミも落ちておらず、整然とした雰囲気を感じられたのが緑園都市らしさなのかと思いました。
④駅周辺の雑居ビル
緑園都市駅周辺の雑居ビルはどれも似たような見た目をしています。
同時期に開発したからなのか、何かしらの協定があるのか、、、。
コンクリート剥き出しの外観は古さを感じさせず、スタイリッシュな印象を持たせますね。
ただ、テナントは相鉄グループがやたらと入居していたり空きテナントのままになっている場所が複数あったりと、なかなか課題を抱えていそうな様子がうかがえました。
地域活性化という意味でも、駅前空間の再開発は少なからず意義があるのではないかと感じました。
⑤相模鉄道株式会社 設備管理事務所
緑園都市駅西口を出ると目に飛び込んできたのが相鉄の事務所でした。
施設部設備課の事務所ということですが、駅前一等地に自社の事務所を構えているのは再開発の際にも期待できそうな側面ですよね。
この場所でなければならない事務所ではないのであれば、再開発に伴って敷地の有効活用が行われそうです。
ただ、航空写真を見る限り、この事務所はそこまで規模は大きくなさそうな印象を受けました。
おわりに
今回は緑園都市駅周辺の開発の歴史から始まり、いずみ野線沿線の開発状況、緑園都市駅周辺の将来性、そして現地の様子と幅広く見てきました。
結論を言えば、緑園都市駅周辺の再開発は計画すら立っておらず、横浜市も相鉄グループも特に言及していないのが現状です。
ただ、これまでいずみ野線沿線で順番にリニューアルが行われてきた経緯もあり、次のリニューアル工事は緑園都市駅周辺となるのが濃厚とみられます。
まだまだ先は長いかと思いますが、今後の緑園都市駅周辺について当ブログで引き続き注目していきたいと思います。
当ブログに記載していない情報をお持ちの方や、当記事への感想などお待ちしております。
お気軽にコメント欄にお寄せ頂ければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
コメント
コメント一覧 (2件)
ヨコハマニアさん、いつも興味深い記事をありがとうございます。
緑園都市は、先日ソラトスを訪問した際、帰りに少し立ち寄りました。あまり時間が取れなかったので東側のショッピングモールとサンステージの周辺を少し歩いた程度でしたが、サンステージは豊かな緑に包まれた、まさにビンテージマンションという風情で、広尾ガーデンヒルズを思い起こさせるような雰囲気でした。サンステージの中古物件がいくつかネットにも出ていますが、今どきの新築マンションと比べてゆとりのある贅沢な間取りで、それでいて年数が経っている分、検討しやすい価格になっています。
他の駅が順次再開発されているので、緑園都市もいずれ再開発されるのではというのは、相鉄沿線を継続的にウォッチされているヨコハマニアさんならではの視点ですね。個人的には、緑園都市は当初から計画的な設計がされているのでそんなに大規模な再開発は無いのではと思う一方で、東口ロータリーの南側の一帯(駐車場のスペースも多い)は再開発の余地がありそうですね。相鉄ローゼンが入っているビルも建物はそのまま使うとしても運営の見直しが必要かもと思いました。
ぴのーるさん、コメントありがとうございます。
サンステージは非常に雰囲気が良いですよね。
駅からのアプローチにも工夫があり、住みたいと思わせる魅力があると思いました。
都心直通しましたし、リモート主体の都内勤務者も検討の俎上にあがるのではないかと思っています。
たしかに大規模な開発はなかなか想像がつかないですね。
沿線状況を見るに、相鉄ライフ緑園都市の建て替えは可能性が高いと思っているので、その際に土地利用の最適化としてマンションと商業施設の一体開発などあり得るのではないかと考えています。